読んだもの

私小説―from left to right (ちくま文庫)

私小説―from left to right (ちくま文庫)

英語と日本語の混じった横書きバイリンガル小説。すごく良かったです。流麗で上質。「アメリカで暮らす孤独」がひしひしと伝わってくる。

今、縁あってアメリカで暮らす機会をもらっているんですけど、それ故か書かれている内容に共感できる部分が非常に多かったです。
ただ、作者も作中で「そしてそれはアメリカに来ても日本の世界におさまっている母にはわかりようもないことであった」と書いているように、私もあくまで「日本人の嫁」としてアメリカに来ているので、十代からアメリカで過ごしてアメリカ社会に居場所を見つけねばならないということがどういうことかはおそらく本当には理解できないのだろうと思います。

多分主人公がアメリカで過ごしているのは1960年代〜80年代だと思うのですが、今のアメリカの状況とはまた違ってそれも面白いです。インド人もメキシコ人も出てきません。場所もニューヨークなので、私が住んでいるコロラドとは全然事情も違うように見えます。私の住んでる辺りは結構平和です。他を知らないんで比べようないんですけど…。

今年は水村美苗に出会えただけでもかなりうれしい収穫でした。今後「好きな作家は?」と聞かれたら、おそらく彼女の名前を挙げると思います。